本ブログを公開した際に、
聴覚評論家 中川雅文 (
@masafummi)さんから、感想をtwitterに投稿していただきました。
中川さんは、「耳の不調が脳までダメにする(講談社プラスアルファ新書)」「補聴器ハンドブック(監訳、医歯薬出版)」等の著書をもつ方なのだそうです(twitterの自己紹介より)。
アンケート結果を医療の立場から見たときに、どうお感じになったのか。ツイートをきっかけに調べてみて分かったことも含め、まとめてみました。
[目次]
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感想ツイートの紹介
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補聴器の調整について
キーワード:2ccカプラー、OSPL90、オーバーゲイン、REM
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聴力変動と手話について
キーワード:思春期、ホルモン、難聴の進行、手話獲得
〇
文字によるコミュニケーション
キーワード:筆談、文字、ICT
[感想ツイートの紹介]
補聴器適合検査でしっかり診断してもらい、良心的な補聴器屋さんで 調整してもらえば補聴器で難聴になることはない。は本当か?
A: 2ccカプラーだけで補聴器適合検査した場合、OSPL90は実効で120dB超えていても見かけ上110~115dBに見えてしまう。補聴器適合検査すれば絶対大丈夫とは言えない。
3割が等級悪化しているのは、OSPL90の評価が適切に行われずオーバゲインとなっているケースが少なくないことを示唆しいている。高度重度ではREMでの評価が必須であるし、2ccカプラだけでの評価は非常にリスキーである。
ラットでは♀の場合、思春期に大きな脳内ネットワーク再編が生じる。使わないシナプスはその接合をドルマントさせる。このことは、思春期に難聴が進むことと関係しているかも知れない。生理学的には性ホルモンの変化がそれに関与していると言われる。
聴覚と口話だけでなく手話を並行して獲得していくことで、難聴の進行に伴うコミュニケーション手段の移行に伴うgapを小さくすることが出来ると思う。
確実なコミュニケーションの取れる筆談や文字の使用のニーズが高まっているから利用者が増えたのか、ITCの普及がそうした結果を導いたかは判断つかない。
その2が楽しみ。
[補聴器の調整について]
キーワード:2ccカプラー、OSPL90、オーバーゲイン、REM
まず、補聴器の調整(フィッティング)の仕方について簡単に触れます。
現在のデジタル補聴器は、専用の機械を経由して、パソコンに接続して設定しています。その際、「マイクに〇dBの音を聞かせたら〇dBの音に大きくする」という設定をするのですが、正しく設定できているかは、実際に「マイクに入力」して「出力音をスピーカーで聞き取る」ことで、確認しています。そのための機会を「補聴器特性試験装置」といいます(以下、特性装置と略します)。
補聴器特性試験装置の例 (リオン社。PDFへのリンク)
特性装置で測定する際に使われているのが「2ccカプラー」という「疑似的な耳」です。2ccというのは、成人の耳の穴の大きさ(2立法センチメートル)を模した空間のことで、そこを経由して、何dBの音に聞こえているかを調べています。
そして測定項目の1つに、
90dBの音を入力したときの「補聴器から出る音の大きさ」を調べるという項目があり、これを「OSPL90」と呼んでいます(JISの規格)。
※正式には「
90 dB入力最大出力音圧レベル OSPL90(output SPL for 90-dB input SPL,OSPL90)」…補聴器の利得調整を最大設定にしたときに,90 dB の入力音圧レベルに対して音響カプラ内に発生した音圧レベル。
簡単に言うと、日常生活の中で、主に
人の話を聞くために必要な音の大きさを60dB、聞き取る音の最大を90dBとして、その音の大きさが
「本人が聞き取れる大きさの範囲」に入るように、オージオグラムを見ながら音量調節をするのが、特性装置を用いたフィッティングの方法です。
「
A: 2ccカプラーだけで補聴器適合検査した場合、OSPL90は実効で120dB超えていても見かけ上110~115dBに見えてしまう。補聴器適合検査すれば絶対大丈夫とは言えない。」という説明は、
・2ccカプラーは「実際の耳の大きさ」と違う場合がある(小さい子の耳は、もっと小さい)。そのことにより、
実際の聞こえが「120dBを超えて」しまう場合がある。
→「
補聴器を付け続けることで聴力が低下する」可能性が出てくる。
ということです。つまり、
機械任せではそれぞれの耳や聞こえ方に対応できない場合がある、ということですね。
また、
「
3割が等級悪化しているのは、OSPL90の評価が適切に行われずオーバゲインとなっているケースが少なくないことを示唆しいている。高度重度ではREMでの評価が必須であるし、2ccカプラだけでの評価は非常にリスキーである。」
という説明は、
・必要以上の
大きすぎる音(オーバーゲイン)で使用することで、聴力低下につながっている可能性が少なからずある。
→補聴器の調整は、実際に
本人が補聴器を付けて実耳で測定(REM)する必要がある。
ということですね。
ちなみにREMについて詳しいことは、以下の検索結果からご覧ください。
「
補聴器 REM」
[聴力変動と手話について]
キーワード:思春期、ホルモン、難聴の進行、手話獲得
「
ラットでは♀の場合、思春期に大きな脳内ネットワーク再編が生じる。使わないシナプスはその接合をドルマントさせる。このことは、思春期に難聴が進むことと関係しているかも知れない。生理学的には性ホルモンの変化がそれに関与していると言われる。」
言い換えると、
「性ホルモンの変化で
使わないシナプスが休眠状態になる現象がラットで見られる。思春期の難聴の進行にも
類似の現象があるのでは」という話(仮説)ですね。
「
聴覚と口話だけでなく手話を並行して獲得していくことで、難聴の進行に伴うコミュニケーション手段の移行に伴うgapを小さくすることが出来ると思う。」
これも、「手話を学んでおけば、
難聴が進行してもコミュニケーション上の影響を小さく抑えられる」ということかと思います。
[文字によるコミュニケーション]
キーワード:筆談、文字、ICT
「
確実なコミュニケーションの取れる筆談や文字の使用のニーズが高まっているから利用者が増えたのか、ITCの普及がそうした結果を導いたかは判断つかない。」
これは在学時から、現在の変化に関する分析ですね。
中川さん、コメントありがとうございました。
なお、中川さんについては、以下の検索結果をご覧いただければと思います。
「
中川雅文」