収集期間: 2018年3月~12月
収集方法:アンケート用紙(知人)およびGoogleフォーム(インターネット公募)
回答総数:111名 → 有効回答108名
回答者の状況について
回答総数が108名となりました。男性32.4% 女性67.6%です。本アンケートは、どちらかと言うと女性の意見が反映されがちと考えても良いかも知れません。
また、年代については20代と30代がそれぞれ3割を超えています。20~30代で7割以上を占めています。
障害の状況について
小学校~高校までの間に、50%の方が2級でした。現在は75%が2級となっています。
特筆すべきは「等級変更が30%もいる」ことです。全体の50%がすでに(等級が重くなりようがない)2級であることを踏まえると、ざっくり言えば「3級~手帳なしの50人のうち、30人(60%)の等級が上がった」ということになります。半数以上と言うこともできます。
※原因についてはアンケートからは分かりません。補聴器装用により聴力が低下した可能性もあれば、高校までは聞こえにくくても手帳は取得しなかったという方もいるかも知れません。ただ、3級以下の方の6割の等級が上がっていたのは事実です。
コミュニケーションの状況について
小~高までと現在のそれぞれの時期における、音声・手話・文字のコミュニケーション方法の使用状況について聞きました。
小~高までも現在も、音声使用者は多いですが、「よく使う」が90→75%と低下している状況もあります。筆談は増えていますが、それでも現在の「よく使う」は4割弱です。
特筆すべきは手話の使用の逆転現象です。「全く使わない」が小~高で63.9%であったのに対し、現在では9.3%と激減しています。逆に「よく使う」は倍増しています。
このことは、高校卒業後に、手話の必要性を知ったか手話を学べる環境が得られたことを示しています。逆に、小~高の在学中は、手話のメリットを生かせない環境だったか手話を学ぶ環境になかったことも示しています。
3つのコミュニケーションを「よく使う」割合で整理すると、小~高では音声使用が非常に強いのに対し、卒業後の現在は音声7割・手話5割・文字3割の順になっています。聴者の社会人と比較すると、手話使用の割合が非常に高いと言えるでしょう。
現在の暮らし(複数回答あり)
現在の生活の中での手話使用の状況についてお聞きしました。
手話サークルに通うなどして、普段から手話で会話しているいる方が約半数、職場で手話で会話している方が37%、家族と手話で会話している方が34%となりました。小~高校までの間に、ほとんどの方が手話を使っていないことを考えると、社会生活での使用頻度は増える傾向があるのかも知れません。
小学校~高校までの様子について
インテグレートしていた時期のことについて、小1~3、小4~6、中学校、高校と、3年ずつの年齢段階に区切っておたずねしました。
在籍状況
在籍していた学級について、普通校の一般の学級内、難聴学級や通級、聾学校と3つに分けて、各年齢段階での在籍状況をお聞きしました。3年の間に複数の在籍がある場合は、それぞれ分けてカウントしていますので、合計はアンケートの回答者数より多くなっています。8割以上が普通校と回答していますが、入れ替わりながら、半数以上が難聴学級・通級に在籍していたことがあると回答しています。
なお、聾学校については、聾学校から普通校に入った方と途中から聾学校に入った方とが混ざっています(聾学校だけに在籍していた方はアンケート対象外)。以下、様々な質問の回答を割合で表示していますが、聾学校だけの在籍者は母数から外し、四捨五入して小数第1位まで求めています。
1)補聴器を付けているのを見られるのが嫌だった
回答はバラついていますが、最も多いのが「全くない」でいずれも3割を超えていました。(回答の傾向が、年齢にかかわらず一定なのか、年齢によって変化しているのかについては、今後の検討課題とします)
2)自分の発音のことが気になった
「頻繁にあった」が次第に増えており、高校では3割以上が「頻繁にあった」と答えています。考察として、①学習内容や会話の内容が高度化していくので、言葉1つを間違えるだけで支障が出たのでは、②思春期に入り周りの人の目が気になるようになったのでは、という事が考えられます。
3)クラスの中で話が分からなかった
とても重要な結果です。
「頻繁にあった」が小1から高校まで一貫して高く、しかも年齢ごとに増えています。かなり多くの方が「話が分からない」環境にいたこと、それが年々進行していることが分かりました。特に、中学高校では「たまにあった」も含めると95~97%という高さです。
4)指示が分からず他の人の行動を真似していた
前の「3)話が分からなかった」と関連していますが、こちらも「頻繁にあった」が非常に高く5~7割となっています。また、「たまにあった」も含めると、小4以降は9割超とかなり高い結果になっています。考察として、インテグレート環境では「話が分からない状態で、集団にくっついていく」状態になってしまうようです。
5)聞こえないことを知られるのを避けていた
全ての年齢段階で「全くない」が最も多く、3割を超えています。「頻繁にあった」「たまにあった」を合わせると、中学校が最も多く4割程度になります。気にしない方が多い中で、中学以降は2割以上が「頻繁にあった」と回答しています。
6)生徒同士の話し合いに参加できた
回答はバラつきがちですが、小4以降は「頻繁にあった」「たまにあった」が半数を超えています。
7)分からないときに「分からない」と言える環境があった
中学以降で「ほとんどない」と答える方が3割以上います。「ほとんどない」「全くない」が徐々に増えています。
8)聴覚障害について話せる、分かってくれる友達がいた
他の項目と比べ、3割を超える回答が出ず、回答傾向が2割台で均等にバラついている印象があります。環境や偶然性に左右されていると言えるかも知れません。
9)サポートしてくれる仲の良い友達がいた
多くの方がサポートしてくれる存在がいたと回答しています。「頻繁にあった」最も多く3割~4割いる反面、「全くない」も17~20%います。
10)障害を理由にいじめられた/いじめの危険を感じたことがあった
いじめリスクは小4~中学校で高く、半数程度が危険を感じている。逆に、小1~3と高校ではかなり低くなることが分かります。いじめの危険性だけを考えるなら、小学校低学年や高校は低リスク、小学校高学年から中学校は高リスクと言えます。
11)集団の中にいても孤独を感じたことがあった
一貫して「頻繁にあった」が高く、特に中学高校では半数以上が「頻繁にあった」と回答しています。前の回答では「友達がいる」と答えていますが、インテグレート環境が「孤独」を感じやすいことがよく分かります。
アンケートの後半については、また後日掲載いたします。
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