2018-12-09

アンケート分析(等級比較)

アンケート結果の詳細比較について、「障害の程度による比較」をしようと思います。
具体的には「小~高のときの障害者手帳の等級」で「2・3級」と「4・6級、手帳なし」の2つに分けると、比較的重度の「2・3級」が72名、「4・6級、手帳なし」が28名となりました。

より多数の「2・3級」をAグループとして左側に、「4・6級、手帳なし」をBグループとして右側にそれぞれ表示します。また、AとBの割合の差をA-B差として右端に表示しています。2つの割合の差を取る際、単位は「ポイント」と表記するのが正しいかも知れませんが、ここでは全て%で表記しています。ご承知おきください。
なお、アンケートの回答者によって無記入の回答があった場合、割合を合計しても100%にならない項目があります。母数が少ない等、必要があれば、有効回答のみで割合を計算しなおします。

解説:性別や年代は、若干違いますが、統制が必要な範囲ではないと考えます。おおむね同様の傾向が見られたものとします。


解説:左がA(2・3級)で右がB(4・6級と手帳なし)のグループです。小~高のときに比較的軽度のBグループの半数が、現在2級になっています。聴力低下の傾向として留めておきたい情報です。
※その他の理由で等級が上がった可能性もあります。


解説:音声の使用は小~高も現在も変わりません。むしろ、音声の使用は障害の程度(手帳の等級)によっては決まらないと考えてよいのかも知れません。つまり、障害の程度が軽いから話せばいいとか、重いから話さなくていいということではなく、その他の要因によって、話す/話さないは決定されているということです。
※もし音声使用の積極性でグループ分けをしたら、何か他に特徴が出てくるでしょうか?興味深いところです。


解説:手話については、Aグループの方がBグループより多く使用する傾向が見られます。インテ経験者の手話使用については、聴覚の活用が難しさが影響しているのかも知れません。
現在の手話使用と現在の手帳の等級の間には、相関があるのでしょうか?今後検討してみたいところです。


解説:文字を使用したコミュニケーションについては、小~高の頃はAグループの方が積極的に行っています。現在はほぼ差が出ない程度の割合です。前述のように、小~高では比較的軽度であったBグループも半数が2級になっており、音声でのやりとりが困難になっているのかも知れません。
文字使用の積極性でグループ分けをしてみると、何かわかるかも知れません。

解説:現在の暮らしでは、Aグループは家族や親戚と手話を使用することが多いことが分かります。

解説:普通校の在籍状況については、小1~3と高等学校でBグループの方が高い結果となっています。その時期は聾学校・聴覚特別支援学校に在籍していたとみられます。難聴学級や通級については数値がほぼ変わりません。


解説:補聴器を付けていることを気にする傾向は、Aグループの方が高く、Bグループでは「覚えていない」が高いことから、特に補聴器について周囲の目を意識していなかったことが分かります。障害について理解をしてほしいというより、自分に障害はない、と思っていたのかも知れません。


解説:発音について気にする傾向は、小1~3、小4~6でAグループは高く、逆にBグループは「全くない」が最も多い回答となりました。ただ、「頻繁にあった」「たまにあった」を合わせると、Aグループは小4~6をピークに減っていくのに対し、Bグループでは徐々に上がっていき、高校では50.0%が「頻繁にあった」「たまにあった」と回答しています。これはAグループよりも高い値です。
考察
仮説1→1対1では問題なくやりとりできたBグループだったが、高校での学習(大勢の中で授業に付いていく、生徒同士のやりとりが増える等)の中で発音を聞き返される(からかわれる)機会が増えた。
仮説2→中学からの友達が減り、高校から知り合うので、発音に慣れていない生徒と過ごす機会が増えた。


解説:小1~3、小4~6では、障害の程度が重いAグループの方が「頻繁にあった」「たまにあった」が多く、Bグループは比較的少なめです(それでも合わせれば半数以上になっていますが)。ですがBグループの「頻繁にあった」は学年が上がるごとに実数が増加しており(9→11→17→19名)、中学高校ではAグループとの差がない程度に「話が分からない」状態になっています。
→ 中学高校では障害の程度に関わらず「話が分からない」状態にいたと言える。


解説:小1~3ではAB差がない状態だが、小4~6では、Bグループの方が比較的「頻繁にあった」「たまにあった」が少ないと言えます(とはいえ7割以上が「あった」と回答)。ただ、Bグループは中学高校ではAグループよりも「あった」と答える割合が高く、逆転現象が起こっています
考察
仮説1→小学校までの「担任の声が聞こえれば良い」では済まない状況に置かれ、どう音声情報を取ればいいかの注意力も磨かれていない状態で中学以降の生活を送っている。
仮説2→聴力が重いAグループは周囲の支援体制が整えられているが、Bグループは1対1でのコミュニケーションが可能な、比較的軽度の方が多く、支援ニーズが「ない」または「分からない」状態にいる。


解説:いくつか10%を超える部分がありますが、有効回答のみで集計しなおすと、小4~6の「頻繁にあった」「たまにあった」の合計について15.3%(上の表では12.7%)がある程度で、特にAB間で特徴的な差は見られませんでした。


解説:特にAB間で大きな差は出ませんでした。障害の程度にはあまり影響をうけない質問と思われます。


解説:「頻繁にあった」「たまにあった」を合わせると、全ての段階でAの方が高い結果となりました。Bグループの方は「支援を求めることが難しかった」「相談しにくかった」という思いをもっている可能性が高いと思われます。


解説:この項目も「頻繁にあった」「たまにあった」を合わせると、全ての段階でAの方が高い結果となりました。Bグループの方は「聴覚障害について話せない」「分かってもらえない」という思いをもっている可能性が高いと思われます。


解説:これも「頻繁にあった」「たまにあった」を合わせるとAグループがBグループよおり多いのですが、特徴的な大きな差が「小1~3」と「中学校」で出ています。それぞれ20%とありますが、有効回答のみで見ると29.8%と27.0%とかなりの差の開きがあります。
→ 聞こえの軽いBグループの小1~3と中学校の環境について、よりきめ細やかな支援が行われる必要があることが示唆される。


解説Aグループの「頻繁にあった」が高めにあり、「小4~6」と「中学校」では特に高いBグループも「中学校」では「たまにあった」が高めに出ています。
→ 聴力の重いAグループは小4~中学生の期間のいじめリスクに注意が必要。また、中学校ではBグループもリスクが高いと感じているため、細やかな目配りが重要。


解説:小1~3ではAB差はありませんが、小4~6ではAグループの方が高くなります。中学校で割合が逆転し、Bグループの方が孤独を感じるようになりますが、高校ではさらに差が開いています。実数で見るとBグループは増加していますが、Aグループは高校で数が減っています。これは高校から聾学校・聴覚特別支援学校に進学した方がいたため割合が変化していると考えられます。


解説:(後日、追記する予定)


解説:(後日、追記する予定)


解説:(後日、追記する予定)


解説:(後日、追記する予定)


解説:(後日、追記する予定)


解説:(後日、追記する予定)


解説:手話を覚え始めた時期は、Aグループが小~高のときに覚えた割合が少し高いです。手話のとらえ方は、Aグループの方が家族も小~高の頃の自分も受け入れやすいですが、逆に「使ってはいけない」もAグループの家族は高いです。Bグループでは、「特に不要」がそれぞれ10%程度高めに出ています。


解説:Aグループの家族に影響を与えたのは、聾学校の先生、家族、友人・知人の順に高く、特に「聾学校の先生」はBグループより16.3%と高く出ています。また、友人・知人も10.1%Bグループより高めです。Bグループでは家族が最多の25%の他は、特に影響を受けた人の傾向は明確に出ていません。
小~高の頃の自分は、Aグループでは友人・知人、家族、学校の同級生、聾学校の先生の順に高く出ています。得に友人・知人は41.7%と半数近くが影響を受けていることが分かります。Bグループについては、小~高の先生、家族、友人・知人が同数(17.9%)ですが、特に割合は高いわけではなく、誰かに影響を受けるということ自体が少なめの印象です。


解説:Aグループでは賛否両論ですが、Bグループでは手話の使用禁止自体がなかったという回答傾向があります。

考察
仮説→Bグループは専門家等との接点がなく、「自然な子育てで十分」と思われていたのではないか。

2018-12-08

アンケート分析(男女割合比較)

男女の相関について取り上げていますが、相関係数の比較を検討する前に、ざっくりとした回答分布(実数と割合)について提示しても良いのかな、と思いましたので、主だった回答については、比較に使ったデータをグラフで公開することにいたします。

回答数100名の内訳は男31、女69で、男女比は約3:7となっています。それぞれの回答の男女分布をご覧ください。なお、回答が多数の女性をA(左側)、少数の男性をB(右側)とし、AとBの割合の差をA-B差として一番右側に表示しています。なお、2つの割合の差を取る際、単位は「ポイント」と言うのが正しいかも知れませんが、全て%で表記いたします。ご承知おきください。


解説:当然ですが、男女はそれぞれ100%ずつです。年齢比は、女性は主に20~30代が中心で男性は20代が半数近くを占めていますが、50代の回答も若干多めです(AB差が11.8%)。


解説:小~高に在学中の手帳等級は、女性は2級が多いです。現在の状況も2級が多く、8割を超えています(AB差が21.3%)。男性の等級は少し分布がなだらかです。聴力変動(の可能性を示唆する等級変更)の割合は30%前後で男女差はありません。


解説:音声については、小~高の頃は同じ程度と考えてよいかと思いますが、現在は女性が高く男性が低めになっています。「よく使う」で16.6%の開き、「たまに使う」も合わせると18.9%とだいぶ差が開きます。
→ コミュニケーションについての意識や態度に男女差が出ているのではないか

※なお、枠外の割合は「よく使う」「たまに使う」を合わせた割合と、「ほとんど使わない」「全く使わない」を合わせた割合です。無回答があると、合計が100%にならないことがありますのでご注意ください(以下同様)。


解説:手話については、小~高と現在で男女ともに逆転していますが、特に大きな男女差は見られません。

解説:文字によるコミュニケーションについては、4件の項目を見ると小~高も現在も男性の方が使う割合が高いように見えますが、2項目ずつまとめた大まかな割合では男女差は見られません。

解説女性の半数以上は手話サークル等に通っています男性は家族や親戚と手話で話す機会が少ない傾向がありますが、その代わり職場で手話を使う割合は男性の方が高い傾向があります(女性は比較すると逆の傾向)。
手話を使って、女性は「おしゃべり」をしたい、男性は「仕事」をしたい、という見方もできるかも知れません。


 解説
 小1~3の普通校在籍状況は女子が高く27.6%の差、中学校の難聴学級・通級の在籍は逆に女子が低く12.6%の差、高等学校での聾学校・聴覚特別支援学校の在籍については、女子が高く17.4%の差がついています。また、難聴学級・通級の在籍は24.6%差で男子が高く女子は低くなっています。

 また、聾学校・聴覚特別支援学校の在籍の年齢ごとの割合を比較すると、男子は徐々に割合が下がっているのに対し、女子は小4~6から順に多くなり、高等段階では男子より17.4%差で多く聾学校・聴覚特別支援学校に在籍しています。


考察
 前述の障害等級で見ると、女子の方が聴力が重度であると考えられますし、人工内耳装用者は(年代的に)少ないと考えられるので、「障害の程度が重度である女子の方が、より配慮の少ない教育の場を選択している」と言えます。これは、男子に比べて女子の保護者や支援者が「障害を軽いものとして扱いたい」と思っている可能性を示唆しているのではないでしょうか。

 その一方で、高校段階では、聾学校・聴覚特別支援学校の在籍は、女子が増加しています。年齢ごとの男女比較を見ると女子は小4~6から高校まで増加しています。
→ 仮説1「小学校高学年からの女子集団の人間関係に付いていけなくなったのではないか」
→ 仮説2「通常学級で学び始め、個別の配慮や専門的な支援が十分に得られなかった結果、徐々に学習や集団に付いていけなくなったのではないか」


解説:女性は全年齢段階で「全くない」が30%を超えています。その一方で、「頻繁にあった」「たまにあった」も小4~6では高めです。男性は高校で「全くない」が30%を超えていますが、あとは回答がバラついている印象があります。
※割合が低いのは「無回答」を「覚えていない」に含めず、男女とも回答総数で割って割合を計算しているためです。

解説:男性は中学校高校で「頻繁にあった」「たまにあった」が多く、合わせると中学校で22.8%、高校で16.0%と高い傾向があります。逆に女性はあまり気にしていない傾向が見られます。
男性は、中学高校段階で発音を気にし始める傾向があるのではないか。いじめリスクや孤独感との相関を気にしても良いのではないか。


解説:男女ともに「頻繁にあった」が高いが、小1~3は女性が11.2%高めに出ています。また、逆に「ほとんどない」も11.6%女性が高い。男性の無記入が多いため。回答のあった数だけで割合を比較すると、「覚えていない」の男性が多い以外のAB差はありませんでした。


解説:小1~3の「頻繁にあった」が男女で割合に差がありますが、男性の無記入が影響したため。回答のあった数だけで割合を比較すると、「覚えていない」の男性が多い以外のAB差はありませんでした。


解説:小1~3の「ほとんどない」は女性が23.3%高く、有効回答数のみで割合を取っても21.5%と高いです。「ほとんどない」「全くない」を合わせると29.1%(有効回答のみで18.7%)となっている。小1~3の時点では、女性は男性よりも「聞こえないことを伝える」ことができていたとみられます。


解説:中学校時代について、男女の回答が逆転しています。「頻繁にあった」「たまにあった」を合わせると男性の方が26.5%と高く出ています(女性は逆に「ほとんどない」「全くない」が高い)。高校でも同様の傾向が見られます。中学以降の学習形態(教科担当制など)での話し合いには参加しづらい傾向がありますが、男性の方が顕著に出ています。話し合いに入れないときにヘルプを求めづらい男性と身近な人に頼みやすい女性の性差が出ているのではないでしょうか。
中学以降の話し合いで、聞こえないことへの支援が得られていなかった。特に男性の場合は顕著に参加できない傾向がある。


解説:小1~3で「頻繁にあった」のは女性の方が10.9%(有効回答のみで10.0%)高く出ています。「たまにあった」も合わせると21.2%(有効回答のみで17.2%)とさらに高くなります。小1~3の時点では、分からなくてもそのままにしやすいのは男性の方であると推測されます。この割合は、中学高校以降に逆転し、「頻繁にあった」「たまにあった」を合わせると、中学で13.9%(有効回答のみで13.3%)、高校で17.6%(同16.7%)となっています。
※ただ、女性は徐々に聾学校・聴覚特別支援学校へ入学する数が増えていることから、付いていきやすい方が残っていることが影響している
中学高校の男性については、「分からないと言える」かどうか要確認


解説:小1~3、小4~6については、有効回答のみで比較すると目立つAB差はありません。中学の男性に「頻繁にあった」が女性より高く、逆に高校では「全くない」が20.7%(有効回答のみで22.2%)とかなり高くなっています。いわゆる「親友」がいたか いなかったかの違いと見ることもできます。


解説:小1~3の「頻繁にあった」「たまにあった」を合わせると16.7%の差が出ていますが有効回答のみでAB差をとると7.1%とそれほど大きい差ではありません。他の項目も同様であり、大きなAB差はないとみられます。


解説:小1~3について、有効回答のみでAB差を取ると目立つ差はありませんでした(0.5~8.9%の差)。小4~6では「たまにあった」が女性について高く13.2%(有効回答のみで14.3%)の差、「頻繁にあった」を合わせると14.9%(同16.4%)の差で女性が高めとなりました。中学校では「頻繁にあった」「たまにあった」を合わせるとほぼ差はありませんが、女性の方が「頻繁にあった」が17.9%(同21.0%)高く出ていました。
高校では男女が逆転し「頻繁にあった」が男性の方が15.3%(同16.7%)高く、女性は「全くない」が男性より13.0%(同20.4%)高く出ており、いじめリスクが大きく軽減されていることが分かります。
※女性は聾学校・聴覚特別支援学校への進学者が比較的多く、母集団が変わっている点に留意
女性は小4~6から中学校の時期、男性は中学校~高校でのいじめリスクがあるのでは


解説:小1~3で有効回答のみでAB差を取ると大きな差はありません(0.6~6.8%)。小4~6も同様(0.9~9.2%)。小学校では特に違いはないと思われます。
中学校では女性の「頻繁にあった」が高く28.3%(有効回答のみで34.0%)の差があった。高校では女性の「頻繁にあった」が12.0%(同20.4%)の差になっている。男性は「ほとんどない」「まったくない」が女性より高く14.2%(同14.8%)となっています。
女性の「頻繁にあった」は中学で63.8%(同73.3%)、高校で50.7%(同64.8%)とかなり高いと言えます。
中学以降に孤独感を感じている女性は非常に多いと言え、対策が必要である。


解説:(後日、追記する予定)


解説:(後日、追記する予定)


解説:(後日、追記する予定)


解説:(後日、追記する予定)


解説:(後日、追記する予定)


解説:(後日、追記する予定)


解説:手話を覚え始めた時期には特にAB差はありませんでした。
手話についてのとらえ方の「家族(養育した人)の考え」について、「必要」は特に差がなく、「特に不要」「使ってはいけない」を合わせるとAB差はありませんが、女性は「使ってはいけない」が高く、男性は「特に不要」が高い傾向がありました。「小~高の自分」は、「必要」が男性の方が高く9.1%(有効回答のみで10.1%)の差がありました。これは家族の影響を受けているのではないかと思われます。


解説:男性に比べ、女性の「家族(養育者)」は、家族や医療機関からの影響を強く受けています。また、「小~高の自分」は、女性は家族の影響をより強く受け、男性は先生の影響をより強く受けやすい傾向があります。


解説:特に目立つ男女差はありませんでした(有効回答のみでも2.2~7.7%のAB差)。



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