具体的には「小~高のときの障害者手帳の等級」で「2・3級」と「4・6級、手帳なし」の2つに分けると、比較的重度の「2・3級」が72名、「4・6級、手帳なし」が28名となりました。
より多数の「2・3級」をAグループとして左側に、「4・6級、手帳なし」をBグループとして右側にそれぞれ表示します。また、AとBの割合の差をA-B差として右端に表示しています。2つの割合の差を取る際、単位は「ポイント」と表記するのが正しいかも知れませんが、ここでは全て%で表記しています。ご承知おきください。
なお、アンケートの回答者によって無記入の回答があった場合、割合を合計しても100%にならない項目があります。母数が少ない等、必要があれば、有効回答のみで割合を計算しなおします。
解説:性別や年代は、若干違いますが、統制が必要な範囲ではないと考えます。おおむね同様の傾向が見られたものとします。
解説:左がA(2・3級)で右がB(4・6級と手帳なし)のグループです。小~高のときに比較的軽度のBグループの半数が、現在2級になっています。聴力低下の傾向として留めておきたい情報です。
※その他の理由で等級が上がった可能性もあります。
解説:音声の使用は小~高も現在も変わりません。むしろ、音声の使用は障害の程度(手帳の等級)によっては決まらないと考えてよいのかも知れません。つまり、障害の程度が軽いから話せばいいとか、重いから話さなくていいということではなく、その他の要因によって、話す/話さないは決定されているということです。
※もし音声使用の積極性でグループ分けをしたら、何か他に特徴が出てくるでしょうか?興味深いところです。
※現在の手話使用と現在の手帳の等級の間には、相関があるのでしょうか?今後検討してみたいところです。
解説:文字を使用したコミュニケーションについては、小~高の頃はAグループの方が積極的に行っています。現在はほぼ差が出ない程度の割合です。前述のように、小~高では比較的軽度であったBグループも半数が2級になっており、音声でのやりとりが困難になっているのかも知れません。
※文字使用の積極性でグループ分けをしてみると、何かわかるかも知れません。
解説:普通校の在籍状況については、小1~3と高等学校でBグループの方が高い結果となっています。その時期は聾学校・聴覚特別支援学校に在籍していたとみられます。難聴学級や通級については数値がほぼ変わりません。
解説:補聴器を付けていることを気にする傾向は、Aグループの方が高く、Bグループでは「覚えていない」が高いことから、特に補聴器について周囲の目を意識していなかったことが分かります。障害について理解をしてほしいというより、自分に障害はない、と思っていたのかも知れません。
解説:発音について気にする傾向は、小1~3、小4~6でAグループは高く、逆にBグループは「全くない」が最も多い回答となりました。ただ、「頻繁にあった」「たまにあった」を合わせると、Aグループは小4~6をピークに減っていくのに対し、Bグループでは徐々に上がっていき、高校では50.0%が「頻繁にあった」「たまにあった」と回答しています。これはAグループよりも高い値です。
考察:
仮説1→1対1では問題なくやりとりできたBグループだったが、高校での学習(大勢の中で授業に付いていく、生徒同士のやりとりが増える等)の中で発音を聞き返される(からかわれる)機会が増えた。
仮説2→中学からの友達が減り、高校から知り合うので、発音に慣れていない生徒と過ごす機会が増えた。
解説:小1~3、小4~6では、障害の程度が重いAグループの方が「頻繁にあった」「たまにあった」が多く、Bグループは比較的少なめです(それでも合わせれば半数以上になっていますが)。ですがBグループの「頻繁にあった」は学年が上がるごとに実数が増加しており(9→11→17→19名)、中学高校ではAグループとの差がない程度に「話が分からない」状態になっています。
→ 中学高校では障害の程度に関わらず「話が分からない」状態にいたと言える。
解説:小1~3ではAB差がない状態だが、小4~6では、Bグループの方が比較的「頻繁にあった」「たまにあった」が少ないと言えます(とはいえ7割以上が「あった」と回答)。ただ、Bグループは中学高校ではAグループよりも「あった」と答える割合が高く、逆転現象が起こっています。
考察:
仮説1→小学校までの「担任の声が聞こえれば良い」では済まない状況に置かれ、どう音声情報を取ればいいかの注意力も磨かれていない状態で中学以降の生活を送っている。
仮説2→聴力が重いAグループは周囲の支援体制が整えられているが、Bグループは1対1でのコミュニケーションが可能な、比較的軽度の方が多く、支援ニーズが「ない」または「分からない」状態にいる。
解説:いくつか10%を超える部分がありますが、有効回答のみで集計しなおすと、小4~6の「頻繁にあった」「たまにあった」の合計について15.3%(上の表では12.7%)がある程度で、特にAB間で特徴的な差は見られませんでした。
解説:特にAB間で大きな差は出ませんでした。障害の程度にはあまり影響をうけない質問と思われます。
解説:「頻繁にあった」「たまにあった」を合わせると、全ての段階でAの方が高い結果となりました。Bグループの方は「支援を求めることが難しかった」「相談しにくかった」という思いをもっている可能性が高いと思われます。
解説:この項目も「頻繁にあった」「たまにあった」を合わせると、全ての段階でAの方が高い結果となりました。Bグループの方は「聴覚障害について話せない」「分かってもらえない」という思いをもっている可能性が高いと思われます。
解説:これも「頻繁にあった」「たまにあった」を合わせるとAグループがBグループよおり多いのですが、特徴的な大きな差が「小1~3」と「中学校」で出ています。それぞれ20%とありますが、有効回答のみで見ると29.8%と27.0%とかなりの差の開きがあります。
→ 聞こえの軽いBグループの小1~3と中学校の環境について、よりきめ細やかな支援が行われる必要があることが示唆される。
→ 聴力の重いAグループは小4~中学生の期間のいじめリスクに注意が必要。また、中学校ではBグループもリスクが高いと感じているため、細やかな目配りが重要。
解説:小1~3ではAB差はありませんが、小4~6ではAグループの方が高くなります。中学校で割合が逆転し、Bグループの方が孤独を感じるようになりますが、高校ではさらに差が開いています。実数で見るとBグループは増加していますが、Aグループは高校で数が減っています。これは高校から聾学校・聴覚特別支援学校に進学した方がいたため割合が変化していると考えられます。
解説:手話を覚え始めた時期は、Aグループが小~高のときに覚えた割合が少し高いです。手話のとらえ方は、Aグループの方が家族も小~高の頃の自分も受け入れやすいですが、逆に「使ってはいけない」もAグループの家族は高いです。Bグループでは、「特に不要」がそれぞれ10%程度高めに出ています。
解説:Aグループの家族に影響を与えたのは、聾学校の先生、家族、友人・知人の順に高く、特に「聾学校の先生」はBグループより16.3%と高く出ています。また、友人・知人も10.1%Bグループより高めです。Bグループでは家族が最多の25%の他は、特に影響を受けた人の傾向は明確に出ていません。
小~高の頃の自分は、Aグループでは友人・知人、家族、学校の同級生、聾学校の先生の順に高く出ています。得に友人・知人は41.7%と半数近くが影響を受けていることが分かります。Bグループについては、小~高の先生、家族、友人・知人が同数(17.9%)ですが、特に割合は高いわけではなく、誰かに影響を受けるということ自体が少なめの印象です。
解説:Aグループでは賛否両論ですが、Bグループでは手話の使用禁止自体がなかったという回答傾向があります。
考察:
仮説→Bグループは専門家等との接点がなく、「自然な子育てで十分」と思われていたのではないか。
考察:
仮説→Bグループは専門家等との接点がなく、「自然な子育てで十分」と思われていたのではないか。