[手順]
1 各質問( 1)から17)まで)と、年齢段階(小1~3、小4~6、中学、高校)ごとにとられたアンケート結果について、「頻繁にあった」を5、「たまにあった」を4…「覚えていない」を1として、それぞれの項目同士の相関係数を求めました。
2 相関係数が比較的高いもの(>0.7)、逆相関が比較的高いもの(<-0.5)を抽出して、高い順に並べました。
[相関の高さについて]
・相関とは(簡単に言うと)、各質問の内容について「同じように回答した割合」を表しています。
・相関の高さは相関係数という数値で見ていきますが、相関係数の最大値は1.0、最小値は-1.0です。相関係数が0に近づけば「両者は特に関連なし」ですが、1に近づくほど「関係が深い」と言えます。
・例えば、Aという質問に「はい」と答えた人の多くが、Bという質問にも「はい」と答えていれば、相関係数は1に近づいて高くなります。逆に、Aに「はい」と答えた人の多くがBという質問に「いいえ」と答えていれば、相関係数はー1に近づいて低くなります(負の相関と言います)。
[相関係数の高かった質問項目]
それぞれの項目について、相関係数が高い順にリストアップしました。
No. | 項目1 | 項目2 | 相関係数 |
1 | 13)小1~3 | 13)小4~6 | 0.876… |
2 | 16)小1~3 | 16)小4~6 | 0.864… |
3 | 12)小1~3 | 12)小4~6 | 0.856… |
4 | 1)中学校 | 1)高校 | 0.843… |
5 | 13)小4~6 | 13)中学校 | 0.840… |
6 | 5)中学校 | 5)高校 | 0.836… |
7 | 9)小1~3 | 9)小4~6 | 0.835… |
8 | 2)中学校 | 2)高校 | 0.832… |
9 | 6)中学校 | 6)高校 | 0.819… |
10 | 14)小4~6 | 14)中学校 | 0.813… |
11 | 17)小1~3 | 17)小4~6 | 0.813… |
12 | 15)小1~3 | 15)小4~6 | 0.806… |
13 | 3)中学校 | 4)中学校 | 0.797… |
14 | 6)小1~3 | 6)小4~6 | 0.790… |
15 | 14)小1~3 | 14)小4~6 | 0.775… |
16 | 4)中学校 | 4)高校 | 0.773… |
17 | 8)小1~3 | 8)小4~6 | 0.771… |
18 | 8)小4~6 | 9)小4~6 | 0.763… |
19 | 7)中学校 | 7)高校 | 0.748… |
20 | 8)中学校 | 9)中学校 | 0.746… |
21 | 8)小1~3 | 9)小1~3 | 0.733… |
22 | 3)中学校 | 3)高校 | 0.728… |
23 | 2)小1~3 | 2)小4~6 | 0.718… |
24 | 13)小4~6 | 15)中学校 | 0.711… |
25 | 4)小1~3 | 4)小4~6 | 0.709… |
26 | 7)小1~3 | 7)小4~6 | 0.703… |
27 | 13)小1~3 | 13)中学校 | 0.701… |
※青字は1と2で質問が違う項目
当たり前と言えば当たり前ですが、同じ質問の隣接する年齢段階の相関係数が高く出ています。逆に言えば、低い学年での様子から「将来の傾向が予想できる」と言えるのかも知れません。
特に、以下のものは相関が強いと言えます(相関係数が0.8より大きい)。例えば、小1~3で指文字が教えられない環境であれば、小4~6でも教えられないことが予想される(逆に、小1~3で指文字を教えてもらっていれば、小4~6でも期待できる)と言えそうです。
13)指文字を教えてくれた | 小1~3と小4~6 |
16)悩みを解決してくれた | 小1~3と小4~6 |
12)ほっとする時間が取れた | 小1~3と小4~6 |
1)補聴器を付けているのを見られるのが嫌だった | 中学校と高校 |
13)指文字を教えてくれた | 小4~6と中学校 |
5)聞こえないことを知られるのを避けていた | 中学校と高校 |
9)サポートしてくれる仲の良い友達がいた | 小1~3と小4~6 |
2)自分の発音のことが気になった | 中学校と高校 |
6)生徒同士の話し合いに参加できた | 中学校と高校 |
14)手話を教えてくれた | 小4~6と中学校 |
17)難聴学級に友達がいた | 小1~3と小4~6 |
15)人との付き合い方を教わった | 小1~3と小4~6 |
次に、上のリストから、同じ質問ではない項目間での相関について、取り上げます。
項目1 | 項目2 | 相関係数 | |
A | 3)中学校 | 4)中学校 | 0.797… |
B | 8)小4~6 | 9)小4~6 | 0.763… |
C | 8)中学校 | 9)中学校 | 0.746… |
D | 8)小1~3 | 9)小1~3 | 0.733… |
E | 13)小4~6 | 15)中学校 | 0.711… |
上のA~Eについて見ていきましょう。
A…中学校で『3)クラスの中で話が分からなかった』と『4)指示が分からず他の人の行動を真似していた』には高い相関がある(相関係数0.797)
B…小4~6で『8)聴覚障害について話せる、分かってくれる友達がいた』と『9)サポートしてくれる仲の良い友達がいた』には高い相関がある(相関係数0.763)
C…中学校で『8)聴覚障害について話せる、分かってくれる友達がいた』と『9)サポートしてくれる仲の良い友達がいた』には高い相関がある(相関係数0.746)
D…小1~3で『8)聴覚障害について話せる、分かってくれる友達がいた』と『9)サポートしてくれる仲の良い友達がいた』には高い相関がある(相関係数0.733)
E…小4~6の『13)指文字を教えてくた』と中学校の『15)人との付き合い方を教わった』には高い相関がある(相関係数0.711)
BCDについては、年齢が違うだけで、同じ項目間の相関です。「話せる、分かってくれる友達の有無」が「サポートしてくれる友達」と直結していることが分かります。
Aについては、「分からない」から「真似をする」という因果関係が考えられます。ただ、BCDのように年齢ごとの相関が近くにない事から、中学校では「小学校と比べて話の内容が複雑になっている」「教科担任制になって指示理解が難しくなっている」「小学校と中学校の集団の作り方の違い」などが背景にあるのではないでしょうか。
Eについては、全く別の項目が関連づけられています。ただ、小4~6の「指文字を教えてくれた」はそもそも「全くない」が68.9%と高い特徴があります。その辺りが影響しているのかも知れません。
次に、逆相関について、高いものから3つ4つ紹介します。
1つ目です。
小1~3の「9)サポートしてくれる仲の良い友達がいた」と、中学校の「14)手話を教えてくれた」には負の相関があります(相関係数-0.607)。
これはつまり、小1~3段階でサポートしてくれる友達が多いほど、中学校で手話を教わらない傾向がある(逆に、小1~3の段階でサポートしてくれる友達が少ないほど、中学校で手話を教わっている)と言えるということです。
2つ目です。
高校において、「6)生徒同士の話し合いに参加できた」と「11)集団の中にいても孤独を感じたことがあった」には負の相関があります(相関係数-0.535)。
3つ目です。
小4~6の「6)生徒同士の話し合いに参加できた」と、中学校の「13)指文字を教えてくれた(相関係数-0.530)」、「14)手話を教えてくれた(相関係数-0.516)」には負の相関があります。
これらの結果をどう見ていくかについて、また徐々に考えていきたいと思います。